なぜ「共有のお願い」は言い方が大事なのか
出張や研修の内容を共有してもらうと、チーム全体の知識が増えたり、同じ失敗をくり返さずにすんだりします。せっかく誰かが時間を使って学んできたことを、一人だけの経験で終わらせないためにも「共有してもらうお願い」はとても大切です。
一方で、「教えてください」「共有してください」という言い方は、受け取る人によっては「仕事をふやされた」「報告が足りないと言われた」と感じてしまうことがあります。とくに、出張や研修から帰ってきたばかりのときは、たくさんのメールやタスクがたまっていて、心にも体にも余裕がない場合が多いです。
だからこそ、お願いするときのひとことには、相手へのねぎらいや感謝の気持ち、そして「無理のない範囲で大丈夫です」という安心感をそえることが大切です。言い方を少し変えるだけで、「やらされている感じ」から「協力したい気持ち」に切りかわってもらいやすくなります。
また、共有のお願いは、自分と相手だけの話ではありません。チーム全体で情報が回るようになると、判断が早くなったり、同じ質問を何度もしなくてすんだりと、組織としての動きもなめらかになります。そのきっかけになるのが、ていねいな「共有のお願いの言い方」です。
忙しい中で「共有をお願い」してもいいの?
忙しそうな相手に共有をお願いするときは、「今すぐでなくて大丈夫です」「時間があるときでかまいません」といった一言を足すのがおすすめです。相手のスケジュールを気づかう言葉をそえることで、「今すぐ対応しなくては」とあせらせることなく、気持ちよく協力してもらいやすくなります。
どんな場面で共有をお願いする?よくあるケースまとめ
「共有してほしい」と伝えたくなる場面はいくつかパターンがあります。まずは、どんなシーンで共有のお願いが出てきやすいのかを整理しておくと、自分の状況にあった言い方を選びやすくなります。
よくあるケースとしては、次のようなものがあります。
- 出張報告:取引先訪問や展示会に行った人から、現場のようすや相手の反応を聞きたいとき
- 研修・セミナー:社内外の研修に参加した人から、学んだことをチームに広げたいとき
- 勉強会・共有会:少人数での勉強会や、社内イベントの内容を他メンバーにも伝えたいとき
- チャットでのミニ報告:正式な報告書まではいらないが、要点だけ知っておきたいとき
また、共有をお願いするタイミングもいくつか考えられます。出張や研修に行くことが決まった段階で、「戻ってきたら、学びを少し共有してもらえるとうれしいです」と先に伝えておくパターンもあれば、帰ってきたあとに改めてお願いするパターンもあります。
先に「共有してもらえると助かる」と伝えておくと、相手もメモを取りながら参加しやすくなり、結果的に報告の内容も整理されやすくなります。一方で、急な追加のお願いになりそうな場合は、「もし可能であれば」「時間に余裕があるタイミングで」といったクッション言葉を使い、負担をかけない言い方を心がけましょう。
どのタイミングで「共有してほしい」と伝えるのがいい?
もっともスムーズなのは、出張や研修に行く前の段階で「戻ってきたら教えてもらいたいです」と軽く伝えておくことです。ただ、予定が読みにくい場合もあるので、帰ってきた直後ではなく、少し落ち着いたころを見計らってから「落ち着いたタイミングで、学びを少し共有してもらえますか」と聞くのもよい方法です。
押しつけに聞こえない「基本のひとことフレーズ」
ここからは、共有のお願いをするときに使いやすい、短いひとことフレーズを紹介します。まずは、どんな相手にも使える「基本形」をおさえておくと安心です。
相手の負担を気づかうときに便利なクッション言葉は、次のようなものがあります。
- もし可能であれば
- ご無理のない範囲で
- お時間のあるときでかまいません
- 簡単な内容で大丈夫です
- 要点だけでけっこうです
これらの言葉に、「共有していただけるとうれしいです」「教えてもらえると助かります」といった一文を組み合わせることで、やわらかい印象のフレーズになります。
たとえば、次のような言い方が考えられます。
- 「もし可能であれば、学んだポイントを簡単に共有していただけるとうれしいです。」
- 「ご無理のない範囲で構いませんので、出張で得た情報をチームに共有してもらえますか。」
- 「お時間のあるときでかまいませんので、印象に残った点だけ教えていただけると助かります。」
また、「お願いしている理由」をそっとそえると、相手も目的を理解しやすくなります。
- 「今後、同じような出張があるメンバーの参考にしたいので、要点だけ共有してもらえるとうれしいです。」
- 「チームとして学びを広げたいので、気づきの部分だけでも教えてもらえると助かります。」
どこまでお願いしてよいか、言葉でやわらかくできますか?
どこまで共有してもらうか迷うときは、「ここまでお願いしたい」という希望と、「できる範囲で大丈夫です」という一言をセットにして伝えると安心です。たとえば、「資料を全部ではなく、ポイントだけ共有していただけると助かります」「詳細な報告書までは不要なので、簡単なメモだけお願いできますか」など、負担をしぼったお願いの仕方を選ぶとよいでしょう。
立場別の言い方:上司・同僚・部下・他部署の人
同じ「共有してほしい」という内容でも、相手との関係によって言い方を少し変えると、より自然に伝わります。ここでは、代表的な立場ごとの言い方を整理します。
まずは、立場別のイメージを一覧で見てみましょう。
| 立場 | 場面の例 | 言い方のイメージ |
|---|---|---|
| 上司から部下へ | 部下が研修に参加したあと | 感謝+期待をバランスよく伝える |
| 同僚どうし | 同じチームメンバーが出張したあと | 協力依頼に近い、フラットなお願い |
| 部下から上司へ | 上司が外部セミナーに登壇・参加したあと | 控えめでていねいな依頼 |
| 他部署の人へ | 別部署の担当者が展示会に参加したあと | 相手の時間に配慮した柔らかい文面 |
上司から部下にお願いするときは、「おつかれさま」の一言と、「今後の仕事にいかしたいので」という理由をそえて伝えると、指示だけの印象をやわらげやすくなります。
「研修おつかれさまでした。チームでも生かしていきたいので、学んだポイントを簡単に共有してもらえるとうれしいです。」
同僚どうしの場合は、少しくだけた言い方でもかまいませんが、相手の忙しさには配慮したいところです。
「出張おつかれさまです。落ち着いたタイミングでいいので、気づいたことを軽く共有してもらえると助かります。」
部下から上司にお願いするときは、あくまで「もし差しつかえなければ」という姿勢をはっきり示します。
「もし差しつかえなければ、セミナーで印象に残ったポイントを、簡単に教えていただけないでしょうか。今後の業務の参考にさせていただきたいです。」
他部署の人にお願いするときは、まず「情報を教えてもらう立場」であることを意識し、感謝の言葉を多めに入れるとよいでしょう。
「展示会へのご参加ありがとうございます。自部署でも検討の参考にしたく、可能な範囲で当日のようすや反応を共有していただけますと幸いです。」
目上の人に共有をお願いするとき、どんな言い方がていねい?
目上の人に対しては、「教えてください」よりも「教えていただけないでしょうか」「共有していただけますと幸いです」といった、少し長めでやわらかい表現がよく使われます。また、「ご多忙のところ恐れ入りますが」と前おきすることで、相手の予定への配慮を示すことができます。
メール・チャットで使える例文テンプレ集
ここでは、メールや社内チャットでそのまま使いやすい例文を、いくつかのパターンに分けて紹介します。自分の状況に近いものを選び、日付や名前を差し替えて使ってみてください。
まず、ビジネスメールで出張報告をお願いしたいときの例です。
件名の例:
- 出張内容の共有のお願い
- 研修での学び共有のお願い
本文の例:
- 「出張おつかれさまでした。お時間のあるときでかまいませんので、今回の訪問で得られたポイントを、簡単で結構ですのでチーム向けに共有していただけますでしょうか。」
- 「研修へのご参加ありがとうございます。今後の業務にも生かしていきたいと考えておりますので、可能な範囲で学びや気づきをご共有いただけますと幸いです。」
社内チャットで、もう少しカジュアルにお願いしたいときは、次のような言い回しが使えます。
- 「出張おつかれさまです! 落ち着いたタイミングで大丈夫なので、学びポイントをちょっと共有してもらえるとうれしいです。」
- 「研修どうでしたか? 時間あるときに、一番印象に残ったところだけでも共有してもらえたら助かります。」
また、まとめて共有会をお願いしたいときのテンプレも用意しておくと便利です。
- 「もし可能であれば、来週のチーム定例の中で、今回の出張内容を10分ほどご紹介いただくことは可能でしょうか。準備に時間をかけていただく必要はなく、印象に残った点を中心にお話しいただければ十分です。」
出張前後のひとことメッセージの表現を広げたいときは、「お土産話、楽しみにしています」の言い換え例を紹介したこちらの記事もあわせて読むと、使えるフレーズの幅が広がります。
メールとチャットで、同じ文章を使っても大丈夫?
基本的には同じ内容でも問題ありませんが、メールでは少していねいめに、チャットではすこし短めにすることが多いです。チャットはテンポよく読む前提なので、長いあいさつは省き、「おつかれさまです」「ありがとうございます」など、短い一言とお願い文を組み合わせると読みやすくなります。
共有の方法を伝えるときのやさしい頼み方
共有をお願いするときには、「どんな形で共有してほしいか」を伝えたほうが、相手も動きやすくなります。ただし、やり方を細かく指定しすぎると負担に感じられてしまうこともあるため、いくつかの選択肢をしめしながら相談するのがおすすめです。
よくある「共有のしかた」を整理すると、次のようになります。
| 共有のしかた | 向いている場面 | ひとことフレーズの例 |
|---|---|---|
| 資料を共有してもらう | スライドや配布資料がある研修 | 「可能であれば、当日使用された資料を共有していただけますか。」 |
| 口頭で短く話してもらう | チームミーティングがあるとき | 「次回の定例で、10分ほど概要をお話しいただけると助かります。」 |
| チャットで要点を書いてもらう | すぐに概要だけ知りたいとき | 「チャットで要点だけ共有してもらえると、とても助かります。」 |
このように、どの方法が合いそうかを自分で考えたうえで、「どの形がやりやすそうか」相手に選んでもらうのもひとつの方法です。
- 「資料共有と、短い口頭でのご説明のどちらか、ご都合のよい形で共有していただけますか。」
- 「もしチャットのほうが楽であれば、要点を箇条書きで送っていただく形でも大丈夫です。」
資料やミーティングなど、具体的な形までお願いしてもいい?
具体的な形をお願いすること自体は問題ありません。ただし、「これでなければならない」という言い方になると、相手の負担が重く感じられてしまいます。「この形がありがたいですが、負担の少ない形で大丈夫です」といった一言をそえることで、押しつけ感をへらすことができます。
トラブルを防ぐための注意点と、使いやすいひとことまとめ
最後に、共有をお願いするときに気をつけたいポイントと、すぐに使えるひとことをまとめます。
まず、トラブルを防ぐための注意点です。
- 共有の有無が評価に直結するような言い方はさける
- 相手の忙しさや状況を考えずに、急ぎの依頼をくり返さない
- どこまでの内容をどのくらいの時間でお願いしたいかを、できる範囲で具体的に伝える
- 一度お願いしたあと、必要以上にせかさない
これらをおさえたうえで、次のようなひとことフレーズを持っておくと安心です。
- 「ご無理のない範囲で、今回の学びを共有していただけると、とても助かります。」
- 「今後の参考にさせていただきたく、印象に残った点だけでも教えていただけますか。」
- 「お忙しいところ恐れ入りますが、お時間のあるタイミングで大丈夫ですので、今回の出張のポイントを共有していただけますでしょうか。」
共有のお願いは、言い方しだいで「面倒な追加の仕事」にも、「チームの成長に関わる大切な協力」にも変わります。相手への感謝と配慮を言葉にのせて、自分も相手も気持ちよく情報を行き来させられるようなひとことを選んでいきましょう。
出張後の会話の広げ方や、ひとことメッセージの工夫を知りたいときは、「お土産話、楽しみにしています」の言い換えをくわしく解説したこちらの記事も参考になります。
共有をお願いしても反応がないとき、どうしたらいい?
少し時間がたっても反応がないときは、「前にお願いした件ですが、その後いかがでしょうか」といった形で、一度だけやわらかく確認してみるのがよいでしょう。その際、「もし今はお時間がとれなそうでしたら、落ち着いてからで大丈夫です」と、相手の事情をおもんばかる一文をそえると、関係をくずさずにやりとりを続けやすくなります。
